父のあとを継ぐ

 父は職業ダイバーだった。ダイビング関係の会社を興したり、潜水士の講習をしたりしていた。
私は父が存命中は一緒に潜ったりしたけれど、妊娠したり子育てしているうちにすっかり海から遠ざかってしまった。
 妹二人も潜れるけど、今ダイビングをしてはいないので誰もあとを継いでいないなあと思っていた。

 ここ数日、もう腹をくくって人形つくって生きてゆこうかと考え始めている。

 昔、実家の本棚やあちこちに、父が粘土で作って彩色した表情いっぱいの首がコロコロ転がっていた。ダイバーや社長で忙しいのに、父が、ただの楽しみのために紙粘土で顔を作ったりしていたのだ。

 今の私だったらあの顔たちを人形に仕立てられたのになあ。知らず知らずのうちに、少しずつ人形を作る技術がついているのだ。今だったらおかしなパペット一座になったろうに。

 父が作りたかったような人形、今の私だったら作れるかも。そんな風に思える。
私、知らぬ間に父の一部を継いでいる。本当に不思議。

 お父さん、ダイバーにはならなかったけど、私人形作ってるよ。

皆、知らず知らずのうちに親のあとを継いでいるんだろうね。同じ職業選ばなくても。