私が物心つくかつかないかのころ、おじいちゃんが美味しいものを食べさせてくれた。ちいさくて、粒粒で、灰色で、柔らかくて、ちょっと塩ッ気があってなんだかとても美味しいもの。
大人になって、あれは最高級のキャビアだったと分かった。良くレストランで何かの上にチョコッと載ってる小粒のくろいのではなくて、もっと大粒でグレイのものだ。
おじいちゃん何で私にそんな高いもの食べさせてくれたんだろう。とても不思議。
おじいちゃんが一人でお茶をたててのんでいて、それを観ている私に気付くと、黒砂糖のかけらをくれた。そしてお茶も一口飲ませてくれた。
おじいちゃんの部屋には大きくて重たい画集があって、退屈な雨の日など、引っぱり出して眺めたものだった。おじいちゃんの部屋でボッシュやフランドル派の画家達に出会った。(オールドローズが好きなのもこのころの体験がベースになっているかもしれない。)
おじいちゃんとはあまり長い時間一緒に居たわけではなかったけれど、何か本質的なものを伝えてもらったような気がする。
変人遺伝子ももらったかもしれない。